「就活イエス」は、
イエスを信じる人たちの、「就活」「働き方」に迫っていくインタビュー記事です。
シリーズ第3段は、大原昌人さん!
【Profile】
名前:大原昌人(Masato Ohara)(フォト・ダニエル)
生まれ:1991年
出身:埼玉県富士見市
職業:楽天株式会社 → 株式会社ダニエルズアーク代表取締役社長
仕事HP:PHOTO DANIEL
- ▼自信を喪失して・・・
- ▼ドキュメンタリーに作家にクリエイティブに教会に・・・
- ▼元々就職活動するつもりはなかった
- ▼楽天に入社して
- ▼預言者の登場 ~買って応援プロジェクト~
- ▼「牧師」は目的じゃない
- ▼株式会社ダニエルズアークを設立 ~現代の箱舟を作りたい~
- ▼会社を立ち上げて
今日はよろしくおねがいします。
よろしく。出てきた質問には何でも答えるので。
ありがたいです! 男性にインタビューするのは初めてですね。今は、どんな仕事をしているんですか?
前働いていた「楽天」を辞めて、「ダニエルズアーク」っていう会社を立ち上げたばかりなんだよね。ちょうど1ヶ月前くらい。
ええっ、1ヶ月前?! どんな会社なんですか。
おいおい話すけど、企業を対象に、撮影の仕事とかクリエイティブ系の案件をやっているよ。
ほおおお。確かに、いつもハイクオリティな写真をupするのを見かけます。じっくり聞かせてください・・・。
▼自信を喪失して・・・
イエスを信じてクリスチャンになったきっかけは何だったんですか?
高校までは、とにかく自信満々な子どもで。自分最強くらいの感じで、自分は何でもできると思っていた。でも、高校1年生のときに付き合っていた彼女に突然フラれて。
あちゃー。辛いっすね。
そう。それがキッカケで、心がやたら敏感になって。いつも不安を抱えて生きるようになった。電車に乗るのも、町中で人とすれ違うのも怖くなってたくらい。高校時代は、そういうふうに、もがいていたんだよね。
そんな時に・・・
そんな時に、大学のオープンキャンパスに行ってね。慶応じゃなくて早稲田なんだけど(笑)。そこで、クリスチャンの人に声をかけられて。教会に誘われたんだよね。その時は、なんとなく今の自分が知らない世界を見られそうな気がして、全く抵抗なく行ったんだよね。
初めての教会はどんな印象でしたか?
教会の空気感とか、いる人たちの雰囲気が、なんだか他と違うなと思ったよね。その頃は1年以上、ずーっと落ち込んでいたんだけど、なぜか教会にいる時だけ心がふわっとつつまれて、解放されるような感覚があった。で、結局、浪人することになるんだけど、その頃から毎週教会に行くようになったかなぁ。
それでイエスを信じた。
うん。自分は結構疑い深い性格で、「宗教は弱いやつが信じるものだ」と思ってたんだよね。だけど、聖書をちゃんと読むと、あれ、これ否定できないなぁと思ったんだよね。あれ、これリアルじゃね? って思い始めて。ちょうどその頃、人生どん底で迷っていて、最終的に人生を神様にかけてみようと思って信じた。
自分最強から、どん底に落ちて、そこからイエスに出会う。ジェットコースターみたいな人生ですね。
▼ドキュメンタリーに作家にクリエイティブに教会に・・・
そのあと、慶応大学に。
そうそう。湘南藤沢キャンパス(SFC)ってとこでね。元々自分は理系だったんだけど、特にやりたいこともなくて。「高校時代に将来やりたいこと決めなきゃいけないの?」って思ってた。だから、理系とか文系問わず、総合的なことを学べるところがいいなと思ってSFCに行ったんだよね。
大学時代は何に力を入れていたんですか?
ドキュメンタリー制作の研究会に入っていて。あとは、作家の先生のもとで、文章の書き方とかを教わるコースにも通っていた。ガチでやってたのはその2つかな。あとは、個人的な趣味で、Macを広げて、Photoshopとか、Illustratorで作品を作ったりしてたっていうのが大学の4年間かな。
うっへぇ、なんでもやってますね。教会生活は?
教会のウエイトも大きかったよね。教会生活は、ものすごい濃かった。だいたい土日は一日中教会だったな。2011年の震災の時は、トラックで東北に人を送り込んで、軍隊みたいなこともやってたよ。
結構激しめの教会生活ですよね・・・
ほんとだよね。今思うと、社会人の時にクリスチャンになってたら、あの生活はできなかった。最適なタイミングで神様に出会えたと思うよ。
▼元々就職活動するつもりはなかった
就職活動はどうしたんですか?
元々就活する気はなかったんだよね。
ええっ、そうなんですか。
そう。僕の時は、大学3年生の12月が就活が始まる時期だったんだけどね。12月に入っても何もしてなかった。というのも、大学を卒業したら、教会が運営する「神学校」に入ろうと思ってたんだよね。牧師になろうかなと思っていて。
へぇ。実は私もそうでした。就活に切り替えたのは、なぜですか?
教会の牧師さんに、「神学校に行こうと思ってる」って相談したら、意外に、「社会人経験が何もないまま牧師になっても、人生の厚みが薄くなってしまうよね」みたいなことを言われて。自分でも、確かにそうだなと思って。
よく言われますよね。
そう。で、じゃあ1年は働いてみようかなと思ってね。1年限定で働くつもりで就活を始めたんだよね。12月の後半くらいだったかなぁ。
受ける会社の分野は決めていたんですか?
1年で辞めるつもりだったから、どうせやるならハード目の方がいいかなって(笑)。あまり分野は絞らず、理念とか面白そうだと思った会社は全部、説明会に行ってたよ。で、行っていた学部がネット系に強かったし、自分もMacでいろいろやっていたっていうのもあって、最終的にはインターネット系で、かつ1年で比較的辞めやすいっていう点で、楽天に決めた。
1年で辞めるとは言っていたんですか?
いや、それは流石に言わなかった(笑)。やっぱり、採用コストを考えると、3年で辞めるならまだしも、1年で辞める人は雇わないからね。
さすが、経営者の目線ですね(笑)。面接ではどんな面白エピソードを語ったんですか?
メインのトピックは、教会生活の話かな。教会でどんなことをしていたとか。みんな、あんまり聞いたこと無いトピックでしょ? だから、興味を持ってもらえたっていうのはあるかな。
▼楽天に入社して
楽天で最初の配属はどこだったんですか?
最初は、楽天市場のクリエイティブの部署。「編成部」っていうところに配属された。
編成部・・・何をするんですか?
楽天市場のトップページに、セールとか、イチオシの商品とかの企画があるでしょ? あれを作る部署。その時期に何を売り出そうとか。夏だけど、どういうキャンペーンをやろうかとかを考えて、プロジェクト作って、みたいな。
デザインもやっていたんですか?
いや、自分はテレビ局でいえばプロデューサーとか、ディレクターみたいな立場で。実際の作業はプログラマーさんにお願いして、自分はディレクションするみたいな感じ。
楽天って新入社員からバリバリ働くイメージがありますが・・・
本当そうだよ。結構、「入社1年目の社員に、こんなにやらせるの?!」みたいな感じだった。仕事はバリバリやってはいたね。だけど、自分は、仕事の細かさとか、マナーとか、そういうところは弱かったので、その点ではかなり怒られたりしたなぁ。
マナーで怒られるとか、楽天はフラットなイメージがありましたけど、意外ですね。
意外と気にする人は気にするんだよね。コミュニケーションをよくとるとか。仕事のお願いの仕方とか。あとは、リリースするページの抜けや漏れをキッチリ確認しないと怒られたり。それまでは、自分は苦手なことは得意な人にやってもらおうっていう考えだったから、いい訓練になったよ。
▼預言者の登場 ~買って応援プロジェクト~
↑ ダニエル氏提案の「買って応援」プロジェクト
一番達成感のあった仕事は何ですか?
一番は、熊本地震があったときのキャンペーン。さっきも言ったみたいに、東日本大震災のときは、自分も現地に行って、バリバリ支援をしていたんだけど、熊本地震の時は、なぜか客観視してしまっていた自分がいたんだよね。
分かります。社会人だと、学生の頃より、遠い世界の話だと感じる。
そうそう。で、そのとき、本当にたまにしか教会に来ない人がいてね。半年とか1年に1回くらいしか会わない人。その人がちょうどそのタイミングで教会に来て。その人が、「今、おまえ何もやらないの?」と言われた。「お前、神様の子供だよね」みたいな感じで。
ドンピシャリのタイミング。
うん。自分としては、神様が預言者を自分のところに遣わしたと思ったよ。別にその人と仲いいわけじゃないし。その時だけ、なぜか自分に対して強くそう言ってきたから。これは神のおぼしめしだと思ってハッとしたんだよね。
それでどうしたんですか?
そのすぐあとに、自分に何ができるか考えたんだよね。やっぱり仕事で何かできないかなぁと思った。その時は、楽天市場のプロデューサーの立場だったから、自分で企画を作れると思ったんだよね。そんな時に、熊本を「買って応援する」という店に行列ができたという記事を読んで。それがキッカケで、楽天でも「買って応援」の企画を作ったらどうかと思いついた。それで、パワーポイントに企画をまとめて、三木谷社長と楽天市場のトップの執行役員の人にメールで送ったんだよね。
ええっ、三木谷さんにメールを! 行動早いですね。そして大胆。
うん。例の預言者が現れた次の日にメールを送ったよ。そしたら、普段社長にメールするなんてありえないんだけど、数十分で社長が返事をくれて。「やっていいよ」と言ってくれた。それで、執行役員の人がいろいろな人と繋げてくれて、「買って応援」のキャンペーンが、その5営業日後くらいでリリースされた。
スピード感がはんぱない!
普通はそういう企画って、楽天でも1~2ヶ月はかかるんだよね。それを1週間で作り上げた。お店とか楽天市場のユーザーから、「今までにないよね」とか、「現地の励ましになるよね」っていう感じで、ツイッターとかで口コミで広がって話題になったよ。
どういう企画だったんですか?
楽天市場のすべての商品に対して、1つの商品を買うと、楽天がそれに対して10円分の義援金を出すっていう企画。それがすべて熊本の被災地への義援金になった。1週間で4万3000件以上の商品が売れたよ。しかも、その後Yahoo!が全く同じ企画を後追いでやってきたりして、日本のeコマース(インターネット市場)業界では話題になった。
うへーービッグ・プロジェクトになったんですね。
マジであの預言者がいなかったらやらなかった。この仕事が認められて、楽天市場のMVP賞に選ばれたんだよね。入社2年目の5月だったかな。
あの預言者の一言が、熊本に元気を与えただけでなく、仕事の成功にもつながったんですね。神様が働くってすごいパワーですね。
↑ 楽天市場のMVPに選ばれた
▼「牧師」は目的じゃない
結局、楽天では何年働いたんですか?
結局のところ、楽天では3年働いたよ。
1年で辞めなかった理由は?
働いてみて、「牧師」っていう肩書きは目的じゃないって気がついたんだよね。人生の路頭に迷っている人たちに、力づくでイエスさまを信じさせることはできないけど、彼らの心にふれることはできる。そういうことをやりたいと思っていたから、牧師を目指したんだよね。で、1年間働いてみて、「あ、これって牧師にならなくても、サラリーマン、社会人でもできるじゃん!」って気がついたんだよね。
分かります。牧師じゃなくても、本質的なことはできる。
ビジネスマンっていろんな幅があって、社会に与えるインパクトも大きいなぁって思ったんだよね。そしたら、「牧師になるぞ」っていう気持ちがだんだんなくなってきて。自分がやりたかった、「人の心にふれる」っていうことは、牧師じゃなくてもできるぞって思った。それが1年で辞めなかった理由かな。
1ヶ月前に楽天を辞めたと。独立に踏み切るキッカケはあったんですか?
さっきも言ったけど、自分が何をするかは、自分で決めたいっていうタイプなんだよね。だから元々自分で何かをやりたいとは思っていた。
でも、やっぱり一番のキッカケは、「箱舟を作りたい」っていうことかな。
箱舟を作りたい・・・??
▼株式会社ダニエルズアークを設立 ~現代の箱舟を作りたい~
ある時、本屋でクリスチャンの写真家の本をたまたま見たんだよね。そこに書いてあったことに心を打たれて。
何て書いてあったんですか?
イエス・キリストは、病人を癒やしたりして、その時代に生きていた人の心にふれた。今の時代は、例えばロックバンドとかが、彼らの曲を通して、飢え乾いている若者の心にふれていると。要するに、アプローチが違うだけなんだと。それ読んで、面白いなと思ったんだよね。
なるほど。「心にふれる」という本質は同じだと。
その通り。イエスさまの当時の人間の問題は、病気とか飢えだった。でも、現代の先進国では、心に飢えた人が多い。そういう人にとっては、音楽で心をゆさぶる人はある意味「メシア」になる。「心にふれる」という意味では、イエスさまのアプローチと、自分たちのアプローチは違うんだなと思った。だったら、自分ができる「心にふれる」ことは何かと考えた時に、自分はビジネスを通してできるんじゃないかなと考えたんだよね。
それが「箱舟」と。
そう。今の社会は、企業や社会の固定観念に囚われている人たちが多いでしょ。仕事ってこういうもんだっていう。そういう人たちを、自分の会社で解放していきたいなと思った。新しいビジネスを生み出すって、ある意味でイエスさまがしたことと、同じじゃないかと。だから、「囚われていた人たちを解放する」という意味での「箱舟」を作りたいなと。社名はそこから来てる。「株式会社ダニエルのはこぶね」っていうのも最後までアリかなぁと思っていたよ(笑)。結局、「株式会社ダニエルズアーク」になったけど。
なるほど、「囚われ人には解放を、囚人には釈放を告げ」と聖書に書いてあるとおりですね。
▼会社を立ち上げて
↑ 今までのお仕事で作ったポスター
会社はすぐ立ち上げたんですか?
楽天を辞める前に、半年ぐらいよく考えて、しっかり準備もしたよ。
準備とはどういう?
例えば、ウェブとか写真を仕事にしたときに、マネタイズ(利益になる)できるようにする準備。仕事にできるようにする下準備かな。実績づくりとか、サンプルづくりとか。
会社はどんなことをしているんですか?
最初チラっと言ったけど、ウェブデザインとかクリエイティブ系のことから、写真撮影の案件とか、いろいろ。主に企業を対象に、セミナーとか座談会の撮影とかも請け負っているよ。まだ会社が始まって1ヶ月くらいだし、まだまだこれから。
気になってたんですけど、なんでニックネームが、「フォト・ダニエル」なんですか?
それは、楽天にニックネームで呼び合う制度があったからだね(笑)。自分は、神様を優先するっていうダニエルの生き様が好きで。この神様が本物だと他の人にも思ってもらえるように、ダニエルをニックネームにした。
今後のビジョンは?
ちゃんと売上のベースを作って、この箱舟にもっと人を載せていくことかな。
人を雇いたいと?
「雇う」っていう言い方も自分はあんまりしっくりきてなくて。一緒にやりたいことをやって遊んで、それで利益出していこうっていう感じかな。
今は起業したわけですけど、1回会社に入ったのは経験としてどうでしたか?
それも、めちゃめちゃ良かったと思う。特に、「あ、人ってこういうことで怒るんだ」ってわかった(笑)。今までは、自分の価値観しか知らなかったけど、他の人はこんな考え方をするんだって分かって良かった。あとは、ビジョンだけ掲げても、人はついてこないんだなって体感できたことかな。
へぇ。人はビジョンじゃなくて、何で動くんですか?
ビジョンじゃなくて、こいつだったら仕方がないな、という人間関係で人は動く。信頼関係。例えば、配慮して根回しをしておくとか。人は偉大なビジョンについていくんじゃなくて、「こいつがこう言ってるからしょうがないな」という感じで、ヌルヌルと動くものなんだって学べた。
なるほど・・・僕も勉強になります。
今までは、偉大なビジョンを掲げれば、勝手に人はついてくると思ってたんだけど、それじゃあ人は動かないって学べた。それは会社に入ってなかったら学べなかったなぁ。
↑ ダニエルズアークでは、こんな美しい写真作品もお願いできちゃうゾ!
最後に、いつも握っている聖書の言葉があれば教えてください。
「あなたの道を主にゆだねよ。主に信頼せよ。主が成し遂げてくださる。主は、あなたの義を光のように、あなたの正しさを、真昼のように輝かされる」
(詩篇 37:5~6)
神様に道をゆだねたとき、神様の光がこの世の中に表れるっていうイメージがいつもあります。
神様にゆだねて進んでいる姿を見て励まされました。僕の心は既にふれられました・・・。ありがとうございました。
ダニエルさんのHPはこちら!
PHOTO DANIEL
(おわり)
◆このブログの筆者の小林拓馬は、現在、完全オンラインのプロテスタント教会「クラウドチャーチ」の牧仕として活動しています。
◆小林は、Podcast&YouTube「まったり聖書ラボ」でも発信中!
※この記事の聖書の言葉は、特に断りがない限り、<聖書 新改訳2017 ©2017 新日本聖書刊行会>から引用しています。